古処山           〜福岡県甘木市/嘉穂町〜

  一九九六年一月四日(木) 古処山  しのさん・ヨシキ
秋月登山口(10:10)→四合目(11:10)→(11:40)秋月登山口

 前日にしのさんから電話があり、三人で古処山に登ることになった。ヨシキがこのところ「高良山には登らん。古処山に登る。」といい続けていたためである。ヨシキは五歳七カ月。体力的には登れるだろうと判断した。ククレカレーとラーメンの準備をして出発した。

 ところがヨシキの調子がよくない。しのさんに甘えている。中腹の駐車場に行き着かずに「ぼく帰る。」とUターンしてしまう。理由は「寒い。」ということだ。確かに今日は寒かったが、これまでにもこの程度の寒さで高良山や目配山に登ったことはあった。どうしてだろうかと帰宅後に話したが、正月に保育所にも行かずに熊本で甘やかされたせいだろうということになった。自堕落な生活でフイットネスが鈍っていたようだ。

 登山口の駐車場でコンロ・コッヘルを使用してカレーライスとラーメンの昼食にする。車が入ってくるので興ざめだが仕方ない。今回はあっさりとあきらめてしまった。しのさんには気の毒だった。ヨシキとの古処山登山は冬場は無理だろうか。三月に再挑戦したい。     
                                              

古処山頂


 一九九六年六月二三日(土) 古処山
                    ヨシキ
秋月登山口(9:15)→(10:05)五合目駐車場(10:10)→(11:05)水舟(11:10)→(11:35)古処山(12:25)→水舟(12:55)→五合目駐車場(13:45)→(14:50)秋月登山口

 ヨシキは六月一二日に六歳になった。あと一年で小学校入学である。ヨシキとのファミリー登山はこの三年間にわたって実践してきた。一昨年は高良山・金峰山・天拝山を中心に一三回山に行った。昨年は回数は八回に減ったが、テントに初めて泊まったことや、ユリも一緒に高良山や金峰山に登れるようになったことが収穫だった。
 私が最も数多く登っている山は地元の古処山である。初めて登ったのは昭和六三年一月だった。あの妻の案内を受けた古処山登山をきっかけに私の登山人生は始まった。あれから八年半が過ぎた。古処山には毎年一〇回は登ってきた。古処山の近くに住んでいることを幸せに思う。古処山がどんなに素晴らしい山であるかは語りつくせない。福岡県では英彦山・犬が岳・背振山・宝満山・釈迦御前の次ぐらいに有名な山だろう。「日本三百名山」には選ばれていないが、田中澄江「新花の百名山」に載っている。古処山は九州のベスト四〇山には選ばれるだろう。

 ファミリー登山の最初の目標が高良山や金峰山に登ることだったとすれば、次の目標は古処山に登ることだった。これが実現できればヨシキと色々な山に登れるようになる。それで一昨年は何度かヨシキとの古処山登山を試みた。水舟まで行ったこともあったが、大抵は中腹の駐車場ぐらいまでで挫折していた。最近ではヨシキが山にそれほど興味を持たなくなって、古処山からも遠ざかっていた。

 ヨシキの六歳の誕生日の前後に古処山登山を果たしたいという気持ちは親の方にはあった。ヨシキは最近話題の「ミニ四駆」に興味を持ち始めていた。家族で話をしていたところ、古処山に登れたら「ミニ四駆」を買ってやろうということになった。梅雨のために天気が良くなかったり、都合が悪かったりで、なかなか実行できなかったが、この日は梅雨の晴れ間で快晴のようだ。ユリを下淵に預けてヨシキとの古処山登山を決行した。

 セブンイレブンでおにぎりなどを買って、登山口に向かう。天気はいい。歩き始めてしばらくはヨシキは調子よく歩く。「僕の頭の中にはミニ四駆のことしかないさ」などと言いながら楽しく歩く。山から下りてきたらミニ四駆が買ってもらえるので嬉しくてたまらないようだ。

 梅雨の長雨が続いていたので古処山は水にあふれている。谷川の水量はもちろん多いが、登山道が川になっているところも多い。ヨシキの靴では中に水が入るような箇所も結構ある。大人にとっては涼感のある楽しい登山だが、ヨシキは水を嫌がっていた。

 大小の橋を何度も渡ったが、ヨシキは「トロルはいるかなあ。」と心配しながら渡っていた。そして「トロルは石になっている。大丈夫。」と言っていた。保育所の発表会でやった「三匹の山羊のガラガラドン」の世界に没入している。川の近くには沢蟹やミミズもたくさんいた。
 五合目の駐車場では家族連れがテントを張ってバーベキューをやっていた。ここにはジュースが浮かんでいなかった。ヤクルトを一本ずつ飲んで、六合目まで登るとジュースが置いてあったので、ヨシキと分け合って飲んだ。ここまでは絶好調で登った。

 ところが出発して七〇分経ったときにヨシキは「僕ミニ四駆いらんから帰る」と突然言い出した。ここからヨシキの顔はひきつり、色々とぐずり始める。「水が嫌。」とか「まだ着かんと。」などと言う。これからが大変だった。あめ玉を与えたり、なだめながら登っていった。

 水舟まで来て、手を洗ったりした。ここからはヨシキにとって簡単な岩登りのようなところもあり、退屈せずに登ることが出来た。「あといくつ数えれば頂上ね。」などと楽しく話しながら最後の登りを終えた。
 古処山には植物に名前を記した金属製の札がかかっている。「つげ」の標示を見た由幾は「古処山には食堂があるとね。」と質問する。下淵に「つげ」という料亭があるので、ヨシキはこれを天然記念物の植物の名前ではなく、食堂の名前と思いこんだわけである。

 二時間二〇分かかって古処山の頂上に着いたときは嬉しかった。ヨシキは喜んで鎖にぶら下がっていた。ヨシキにとっては自分の力で踏んだ初めての古処山頂だ。ラーメンを作り、おにぎりを食べた。この簡単な昼食が山ではおいしい。食後のコーヒーもうまい。至福の一時だ。

 写真撮影をして下山する。下りは子供にとっては油断すると危険な箇所も多いので、注意深く用心しながら慎重に下る。下りは二時間二五分と登りよりも時間がかかった。スピードは遅かったが、ヨシキは私におんぶやダッコをしてもらうことなく、最後まで淡々と歩いた。よく地力でがんばった。

 下山後にヨシキとミニ四駆を買いに行ったが、どこのおもちゃ屋さんも売り切れだった。ヨシキは残念がっていたが、古処山にちゃんと登ったので約束通りいつか買ってやることにする。 

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