奥武蔵自然歩道       〜埼玉県飯能市/日高市〜

         2005年7月29日(金) 奥武蔵自然歩道  ユリ
飯能駅(9:50)→(10:40)天覧山(10:50)→(11:35)高麗峠(11:50)→(12:20)あいあい橋(12:40)→(13:15)高麗駅

ユリと東京に出かけた。ユリが小学校を卒業した今年3月にも東京に出かけて、三浦半島の大楠山に登り、東京文学散歩を楽しんだ。三四郎池や神田の古本屋を回った。原宿、渋谷、明治神宮、皇居、東京タワーも行った。今回はピチレモン夏祭りに参加するのが目的だ。ユリはビチレモンというローティーン向けのファッション雑誌を愛読している。そのモデルさんたちと読者との交流会が代々木第二体育館で開かれる。私としては奥武蔵自然歩道を歩きたいと考えた。その他のことは東京で考えようということで、三日間の日程を確保した。

 当日は5時50分に家を出た。前回よりも出発を1時間早めた。車で空港に向かう。三日間で2400円の駐車場に預ける。ここで福岡山の会のIさんとFさんに出会った。ガイドの仕事で南アルプス北岳に行くとのこと。ユリはお二人に何度か会ったことがある。

 4ヶ月ぶりの飛行機と東京になる。8時15分福岡発で10時前に羽田着。私は都会歩きが苦手だったが、今回はそれほど苦にならなかった。慣れてきたようだ。品川プリンスホテルに荷物を預けて原宿に向かう。原宿駅から代々木体育館はすぐだ。この日はここで11時から16時まで5時間ほどを過ごした。
 ピチレモン夏祭りはファッションショーや歌手の川嶋あいのライブなどがあった。にぎやかだったが、派手ではなかった。私は保護者席でのんびりしていた。休養になった。読みかけていた夏目漱石『三四郎』を読んだりしていた。

 初日に自分の好きなことができたユリは満足したようだ。このあと、私が行きたい奥武蔵、秩父や東京各地の文学散歩に気持ちよくついてきてくれた。

 ホテルに17時頃チェックイン。前回は28階だったが、今回は23階。東京タワーは正面には見えない。しばらくくつろいで食事に出る。前回も寄った桃苑というラーメン屋さんで焼き飯やラーメンを食べる。二千円ほどですんだ。本屋さんに入り、『日帰りウォーキング関東周辺1』『江戸ウォーキング』という本を買う。これが翌日の奥武蔵、秩父、翌々日の上野、本郷、深川の参考資料になった。

 部屋に戻って休んでいると地震があった。東京ではこの数日前に比較的大きな地震があり、電車が長時間とまったりしていた。この時の揺れは大したことはなかった。しかし、23階の部屋で揺れると心理的にはゾクッとする。

 「幸せになりたい」というドラマを部屋のテレビで見る。松下由樹と深田恭子が出ている。ユリはこのテレビを見て、「テレビのプロデューサーになりたいと思ったこともあったけれど、夜眠らないで仕事をしなくてはいけないと聞いてあきらめた。ゆりちゃんは眠らないで何かするなんてできない」と言っていた。我が家ではこの他、「ドラゴン桜」や「いま会いにゆきます」なども見ている。いくつかのドラマを親子で見て、話題を共有することも大切だと思う。
                                            

ピチレモン夏祭り1

  
 翌朝は6時に起きる。バイキングの朝食のあと、山歩きの準備をして出発する。どこに登ろうかずいぶん迷った。東京からは日帰りで行くことができる地域はたくさんある。日光、栃木、筑波山、水戸、房総、伊豆、箱根、湯河原などにも惹かれるが、特急利用で片道2時間のところには金銭的な問題もあり、二の足を踏んでしまう。東京にたびたび来ているわけではないのだから、近場に絞ることにした。

 三浦半島は割合近いので、荒崎海岸のウォーキング、城ヶ島の北原白秋ウォーク、三浦富士なども検討したが、夏場は直射日光を受けると暑い。できるだけ木陰のなかを歩く方がいいだろうということ、前回3月に来たときは、三浦半島最高峰の大楠山か奥武蔵自然歩道か迷ったということもあり、奥武蔵自然歩道を歩くことにした。

 「奥武蔵」という言葉の響きにはロマンがある。内海隆一郎に『瀬の音』という短編小説がある。奥武蔵で一人暮らしを続ける老人の話だが、「こんな深山幽谷が東京の近辺にあるのか」という表現が心に残っていた。奥武蔵を歩いてみたいという憧れを持っていた。

 品川から山手線で池袋まで。池袋から西武鉄道に乗り換える。普通電車で飯能まで1時間ほど。西武ライオンズの本拠地の所沢などを通る。山手線はビジネスマンでラッシュだったが、西武池袋線は逆流になるので、乗客は少なくのどかだ。電車のなかで朝食を頬張っている人もいる。

 飯能駅に着く。ここは埼玉県だ。飯能市は人口8万人あまり、東京のベッドダウンで電気製品の工場が多いという。方角を確認して歩き始める。スーパーで飲み物などを買う。

 市街地をしばらく歩くと、やがて「奥武蔵自然公園」の標識がある。奥武蔵自然歩道の入口だ。舗装された道を上がっていくと広場があり、大きなトイレもある。団体の登山者に出会う。ここから自然歩道になる。天覧山への道は何本かあり、飯能市街を見下ろしながら鎖のある岩場を歩くとすぐに頂上だ。

 天覧山は標高195メートル。古くは羅漢山と呼ばれたが、明治16年に陸軍の演習を明治天皇が眺められたということから、天覧山の名が付けられたという。立派な展望所がある。

 三脚を使って二人で写真に収まった。最近新しいデジカメを買った。以前のものより小型化、軽量化している。非常に使いやすい。デジカメが軽いので三脚も軽量のものでよい。ザックに入れて持ち運んでも負担が小さい。

 ここから下り、巾着田方面へ向かう。車道に出て、やがてまた自然歩道に入る。高麗峠まで緩やかな坂を登っていく。遊歩道はよく整備されている。すれ違う登山者は多い。道がぬかるんでいる箇所が多く、滑らないように注意して歩く。セミの声、小鳥のさえずりが心地よい。真夏の山歩きなので暑さを心配したが、木陰のなかを歩くので意外に涼しい。気持ちのよいウォークを楽しんだ。

 高麗峠(こまとうげ)は展望はないが、広いところだった。標高は177メートル。天覧山とあまり高さが変わらない。木製のベンチがあり、休憩した。地元の方がいらっしゃった。このコースはよく歩いているとのこと。親切な方で色々と教えて下さった。私はガイドブックで知ったドレミファ橋を渡るのを楽しみにしていたが、数年前の台風で流されてしまい、ドレミファ橋は現存しないとのこと。高麗川を渡るのには少し先のあいあい橋を渡らなくてはいけないということ、あいあい橋は木製の橋としてはかなり長い橋だということ、あいあい橋付近では川遊びができることなど、ずいぶん参考になった。

 高麗峠からは下りになる。「ドレミファ橋は通行できません」という案内板もあった。やがて車道になり、高麗小学校の横を通って行く。高麗川(こまがわ)にかかるあいあい橋は新しい大きな橋だった。橋の下では川遊びの親子連れが楽しんでいた。橋を渡ったあと、私たちも河原でのんびりした。ユリは靴を脱いで川に足をつけていた。裸足でくつろいでいた。

 この付近は埼玉県日高市になる。奈良時代に高麗人が移住開拓した土地とされる。高麗峠、高麗川、高麗神社の由来である。

 巾着田という地名は日和田山から見ると、巾着の形に似た地形から来ているようだが、この付近の高麗川と田園の風景は見事だ。東京近郊にこんなところがあったのかという気分にさせる。高麗川に沿って歩くが、川遊びに来ている人たちが多いのに驚く。

 高麗駅に到着する。「天下大将軍」「地下女将軍」の大きな標柱が目立つ。朝鮮半島からの渡来人を集めて高麗郡をおいたことに由来するという。

ビチレモン夏祭り2


天覧山


高麗峠


自然歩道を歩く


あいあい橋


高麗川の水遊び


西武鉄道高麗駅


西武秩父駅前のアーケード


 高麗駅は西武池袋線の駅だ。この線は池袋と秩父を結んでいる。ここから池袋に引き返すか、秩父まで行くかということになるが、今日奥武蔵自然歩道を歩いてみて、『瀬の音』の舞台はここよりももっと秩父寄りではないかということに気付いた。伊豆が岳や正丸峠に登った方が『瀬の音』の風景は味わえたかもしれないと思ったが、車窓の風景だけでも味わってみたいと思った。ユリが嫌がるのではないかと心配したが、話を持ちかけるとユリはあっさり承知してくれた。ユリはわがままを言うこともあるが、基本的には私によく付き合ってくれる。

 高麗駅から普通電車で秩父まで行く。線路に沿った渓谷が美しい。蛇行する谷川の風景はまさに『瀬の音』の世界だ。トンネルが多い。正丸トンネルを抜けると、首都圏とは言えないような風景が広がる。感動的な光景だった。

 秩父駅の一つ手前の駅は「横瀬」。この付近が小説の舞台なのだろうかと考えていた。秩父市内は盆地で開けたところだ。『瀬の音』でいう「奥武蔵」は正丸峠と横瀬の間を指すと考えていいようだ。

 西武秩父駅の前は賑やかなアーケードになっている。ここで昼食に秩父そばを食べる。帰りは特急レッドアロー号を利用することにして、乗車券と特急券を買う。

 特急電車は思ったよりも立派な電車だった。ユリが「新幹線みたいな車両ね」と驚いていた。秩父から池袋まで1時間20分だから、秩父は東京への通勤圏になる。隣の座席の人たちはビールやつまみで小宴会だった。ユリはさすがにくたびれたのか、飯能を過ぎると眠り込んでいた。このレッドアロー号は寝るにも食事にも宴会にもよしだ。快適な電車だった。

 池袋に着くと、雰囲気が一変する。平日の夕方のせわしい空気が地下街に漂っている。夕方の通勤地獄だ。山手線で品川に戻り、ホテルでシャワーを浴びる。リフレッシュしたところで、渋谷に出る。夕方のラッシュはますますひどくなってくる時間で、私たちもすし詰め状態になっていた。そのなかで原書を片手に読んでいるビジネスマンに驚嘆していた。

 ユリは渋谷でディズニーストアと109に行った。ディズニーストアは3月に来たときも行った。私は店の前で座り込んで待っていたが、ユリはどちらも短い時間で出てきた。服や小物を買ってきたようだ。

 このあと渋谷駅のつばめグリルというレストランで夕食。ハンバーグを食べたが、デザートを我慢した。ユリは経済観念は発達している。むやみにお金を使わせないのは偉い。

 ホテルに21時には着いて、入浴したりしてくつろぐ。テレビの「ドラゴン桜」を一緒に見た。東大を目指す話だが、ユリと私は3月に東大構内の三四郎池に立ち寄っている。親子で同じドラマを一緒に見るというのはいいことだと改めて思った。

本郷深川散歩へ続く

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