耳納連山「漱石の道」         〜福岡県久留米市〜

            2003年3月9日(日) 耳納連山  福岡山の会
草野町発心公園(9:10)→尾根ルート→(10:45)発心山(11:00)→耳納平→(12:45)昼食(13:20)→兜山→(14:50)高良山(15:10)→(15:45)王子宮

 福岡山の会に入会して10年目を迎えることになった。毎年この時期に係として筑後地方の山を取り上げている。これまで古処山、目配山、砥上岳、鷹取山、明星山などを案内してきた。今回は通算10回目の係になる。計画立案時に適当なコースを思いつかずに、5年前にも実施した耳納連山の「漱石の道」縦走コースを歩くことにした。

 5年前のこの時期に、福岡山の会は朝日新聞に「近郊の山歩き」を連載していた。私は発心山の14キロの「漱石の道」を取り上げ、原稿を仕上げ、この山行で写真を撮った。発心山頂での和やかな昼食風景の写真が新聞に掲載された。

 その後、海鳥社から『福岡県の山歩き』が出版された際にはこのコースも載った。山のガイドブックに耳納連山の「漱石の道」を取り上げることができた。

 昨年10月に下見に出かけた。5年ぶりにこのコースを歩いた。林道が入り組んでいる発心山への登りは標識が整備されて道が分かりやすくなっていた。 
                                              

発心公園の句碑
松をもて囲いし谷の桜かな

   この数日前に膝が痛くなった。これまでにも寝起きや長時間の会議の後に軽い膝の痛みを感じることはあったが、激しく痛むので整骨院に行ったり、あれこれ調べたりした。年をとると原因不明でこうなることがあるらしい。登山では登りよりも下りで問題があるということで、当日は用心して行動することにした。

 今回は参加申し込みの出足が鈍かったが、直前になって参加者が増えた。最終的には会員7名、入会希望者1名で歩くことになった。

 久留米インターの近くで佐賀の入会希望者のゆきさんと待ち合わせ。下山口の王子宮の駐車場まで一緒に行き、私の車を置いて、ゆきさんの車で登山口の草野町に向かう。発心公園の新しい駐車場に着くと、Mさんが車で到着される。Mさんの車でJR草野駅に行く。バスを降りられたHさんが発心公園に向かって歩いてこられる。無人の草野駅で久大本線の旅を楽しまれたSさん、P子さんが降りてこられる。そこへ夜勤明けのMさんが娘さんの車で到着。

 発心公園に戻ると、しげさんがいらっしゃった。一本早い電車で来て、発心公園付近を散策されていたとのこと。今日の参加者8名勢揃い。当日のドタ参の方はいなかった。SさんとMさんは5年前にも参加していただいている。

 準備をしてスタート。最初に公園内の夏目漱石句碑を見学する。

   松をもて囲いし谷の桜かな

 熊本の第五高等学校教授だった漱石は明治30年3月に久留米に来て、高良山に登り、耳納連山を縦走して発心山から草野町に降りている。この地が当時松の木が多く、桜の名所だったことが分かる。

 発心山へは急登だ。Mさんを先頭にのんびりと歩く。登ってくると筑後平野の眺めがよくなる。標高が上がるに連れて雪がちらつくようになる。このところの雨でぬかるんでいるところもあるが大したことはない。やがて展望のいい発心山頂に到着する。

 発心城跡の説明版を見て、自然歩道を経て、横岩ルート入り口の漱石句碑へ降りる。急な下りに閉口する。

 ここは発心山の北側斜面になり、きれいな霧氷を味わうことができた。しげさんの温度計ではほぼ0度。とても3月9日とは思えない。

    濃やかに弥生の雲の流れけり

 「濃やか」は「こまやか」と読むが、「何と読むのだろう」と話題になっていた。この漱石句碑は耳納連山の最も奥まったところにある。車で来るにしてもなかなか遠いところだ。5年前の「せふり」にはここでの記念写真を載せている。

 食事の時間には早いので耳納連山の縦走を続けることにする。5年前にこの登山に参加されているSさん、Mさん、私は車道を歩く。あとの5人の方はMさんを先頭にスカイラインの左右につけられている自然歩道を楽しんでいただいた。アップダウンのある自然歩道は時間がかかるので、車道歩きは休憩時間が取れて楽だ。膝を痛めているのでありがたかった。

 八女郡上陽町との分岐の耳納平を過ぎるころからお腹が空いてきた。晴れたり、雪が降ったり、天気や気温がコロコロ変わっていたが、天気が良くなり、うららかな陽気になった。適当な草地を見つけて食事をとることにした。

 30分ほど休憩した。時々通る車が珍しそうに私たちを見ていくのが面白い。食事をしながらの山の話題は尽きることがない。P子さんの膝のサポーターを見せてもらった。

 この後は雪が降ることもなく、天気は安定していた。兜山の青木繁記念碑はパス。高良山に近づくと2カ所の漱石句碑がある。

    筑後路や丸い山吹く春の風

 この句碑はユニークだ。めがねのように穴が空いている。しげさんとP子さんは顔を出して遊んでいた。

    人に逢わず雨降る山の花盛

 夏目漱石の『草枕』に画工が春雨に打たれながら山越えをする場面がある。この俳句の情景だろうと考えられる。「人に逢わず」は岩波書店の「漱石全集」では「人に逢はず」となっている。誤記だろうと思われる。

 程なく高良山頂到着。何人かの方は山頂を踏んで、展望所の漱石句碑へ。ここからの筑後平野の眺めは最高だ。

    菜の花の遙かに黄なり筑後川

 この縦走路の漱石句碑の中で碑そのものも俳句もこれが一番立派だと思われるが、俳句を創作しながら歩かれていたP子さんは不満げだった。

 王子宮に降りる。下りなので膝を痛めないように注意しながら降りる。時間がかかってみなさんを待たせてしまったようだ。

 私のセレナに参加者全員を乗せて、発心公園の駐車場に戻る。Mさんは所用で帰られて、ゆきさんの車と私の車に分乗して久留米市街地に向かう。Mさんの行きつけの焼鳥屋さんで打ち上げ。福岡山の会のメンバーで久留米の飲み屋に入るのは私にとって初めてのことだ。楽しいひとときを過ごすことができた。

 このなかで懸案になっていた福岡山の会のホームページについての論議も深めることができた。有益な時間だった。 

発心山頂近くの霧氷

発心山頂近くの句碑
濃やかに弥生の雲の流れけり

高良山の近くの句碑
筑後路や丸い山吹く春の風

高良山の近くの句碑
人に逢わず雨降る山の花盛

高良山頂の句碑
菜の花の遙かに黄なり筑後川

耳納連山の縦走路
    漱石の句碑に触発された P子さんとしげさんの俳句を紹介しておく。

  暗闇や アブミ舞あぐ 春の笑み(P子)

 K先輩との宝満山『空間リッジトレ』を思い出して、作りました。暗闇。強風でアブミが舞い上がり、うまく登れない。疲れて気分が落ち込み気味だったが、遠くから聞こえる、K先輩の『ファイト!ファイト!』の叫び声。何度も何度も叫んで下さるので、思わず笑ってしまった。
K先輩の優しさを感じた。落ち着いて、辺りを見回すと素晴しい夜景。またファイトが出た。

  名残雪 弥生の空に フグリ咲き(しげ)

 今回の耳納連山山行は、霧氷や雪のちらついたかと思えば、青空がのぞいて春らしくなったりと早春の雰囲気を堪能できる山行でした。道端に咲いていたオオイヌノフグリの可憐な花を思い出して詠んでみました。

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