2000年8月箱根伊豆浜松の旅
                          川端康成・夏目漱石を歩く

8月4日 箱根金時山 

仙石バス停(9:10)→(10:55)金時山(11:10)→(11:55)矢倉沢峠(12:05)→(12:45)仙石バス停

箱根の名峰で金太郎で有名な金時山に登り、その後で四年前に伊豆の天城山に登っていたが、伊東から天城峠に抜ける「伊豆の踊り子縦走コース」を歩くという計画を立てた。

 八月三日の朝、甘木インターから妻に見送られて高速バスに乗る。新幹線のぞみ号で名古屋まで行く。ここから乗り換えて小田原まで。新幹線の隣に座っている人が変わっていくのは眺めていて面白い。車や飛行機の旅にはない汽車旅の楽しみを久しぶりに味わった。

 博多駅を八時三五分に出発して小田原に一四時六分に着いた。宿泊が「ホテルとざん小田原」というところだった。一泊六三〇〇円。ここからは箱根方面への登山電車や登山バスがたくさんある。小田原が箱根への登山基地だということを初めて知った。

 小田原の街をぶらぶらする。ここは神奈川県小田原市だ。静岡県との県境になる。元自民党総裁河野洋平氏の選挙区だ。「小田原評定」で有名な小田原城に行く。豊臣秀吉の小田原攻めで知られるところだ。天守閣からの眺めは良かった。

 小田原市内の本屋で『箱根のハイキング』『伊豆のハイキング』という二冊の本を買った。地元の「まなべアート」の発行だ。この本はこの後の登山に役立った。

 八月四日は六時に起きて小田原駅から出ているバスに乗って箱根に向かった。箱根湯本を過ぎ、仙石バス停で降りる。ここから国道一三八号を一五分ほど歩き、金時神社入り口バス停から登山開始。

 歩きやすい整備された道を登っていく。箱根の展望がいいところからすぐ金時神社分岐と呼ばれるところに出る。雲が多くて天気が心配だが、この山は登山者が多い。ほどなく山頂に出る。標高一二一三メートル。頂上に二件の茶屋がある。缶コーヒーが二百円だった。意外に安かった。

 下山は滑りやすい。矢倉沢峠から金時登山口バス停に降りる。矢倉沢峠から明神が岳に行ける。箱根には色々な縦走ルートがあることを知った。

 下山後にバスで湯本まで行く。箱根湯本の都会的な賑わいには驚いた。ここは一つの街である。食事をとろうとしたが、レストランの値段が高いので気後れする。箱根湯本駅には小田原からはもちろん、新宿からの直通電車もある。東京と直結しているわけだ。湯本駅で「とざん電車弁当」を買って、あじさい橋のたもとの河原で風に吹かれながら昼食にした。のんびりとした時間を過ごすことが出来た。

 箱根湯本駅から電車で小田原まで戻り、小田原からJR東海道線で熱海まで行き、伊東線に乗り換え、伊東駅まで行く。四年ぶりの伊東だ。

 伊東の旅館は暖香園。従業員の接客態度が良く、好感の持てる宿だった。


8月5日 伊豆天城峠(踊り子歩道)

天城峠バス停(10:00)→(10:30)天城峠(11:20)→(11:50)伊豆の踊り子文学碑(12:10)→(13:15)昭和の森会館(14:30)→(15:10)浄蓮の滝

 バイキングの朝食の後、宿の人に伊東駅まで送ってもらう。弁当を買って、バスで修善寺温泉駅へ。さらにバスで天城峠バス停まで行く。ここから今日の登山開始。八丁池を周遊して「踊り子歩道」を歩くつもりだ。

 バス停から石段を登ると、旧天城トンネルの入り口に出る。さらに登ると天城峠。そこからブナ林の中を歩いて八丁池を目指すが、道幅が狭く私の苦手な道になっている。これが意外に長く続き、歩くのが苦痛だ。行ったり来たりした挙げ句、引き返すことにした。

 ここからは踊り子歩道を歩くことになる。浄連の滝から湯ヶ野まで全長二〇キロのコースだが、今から全線を踏破するのは無理なので、天城峠と浄連の滝の間に的を絞る。林道をしばらく下って、伊豆の踊り子文学碑で弁当を食べる。
 国道四一四号に沿って、立派なよく整備された自然歩道が付けられている。歩いていて気持ちがいい。車道を横切ることはあるが、ほとんどが自然歩道だ。大川端キャンプ場を過ぎると、やがて昭和の森会館というところに着く。ここには伊豆近代文学館がある。入場五五〇円だが、なかなか面白かった。川端康成や井上靖など伊豆にゆかりの文学者の資料がたくさんある。井上靖の旧居が復元されていた。明治から昭和戦後期までは東京で活躍する文学者にとって伊豆は格好の避暑地、滞在地だったわけだ。夏目漱石の「修善寺の大患」のことは意外に小さく扱われていた。ここで「伊豆文学紀行」という本を買った。伊豆の文学のことがよく分かるいい本だ。

 わさびソフトを食べて出発。横光利一文学碑や島崎藤村文学碑を見て、浄連の滝に着く。伊豆最大の滝だということで見学する。

 この後はバスで修善寺温泉に向かう。井上靖の故郷であり、川端康成がたびたび滞在した湯が島温泉を通って修善寺駅に着く。今日の宿は「ホテル滝亭」というところだ。夏目漱石の「修善寺の大患」で有名な修善寺温泉にいよいよ泊まる。


修善寺温泉の夏目漱石詩碑


8月6日 修善寺温泉自然公園夏目漱石詩碑

ホテル滝亭(5:20)→修善寺自然公園・夏目漱石詩碑→修善寺→(7:00)ホテル滝亭

 五時に起きて修善寺の自然公園まで車道を歩く。ここには夏目漱石の詩碑があるということで是非行ってみたかった。着いてみると感じのいい自然公園だ。丘の上に上がると夏目漱石の詩碑がある。これは昭和八年に建てられたという。

  仰臥人如唖   
  黙然看大空
  大空雲不動
  終日杳相同

 『三四郎』『それから』『門』の前期三部作を書き終わった四三歳の漱石は明治四三年八月六日から一〇月一一日まで二か月間修善寺の菊屋旅館に滞在している。その間八月二四日に「修善寺の大患」と呼ばれ「三〇分間死んでいた」危険な状態に陥っている。

 明治四三年は西暦一九一〇年なので、今日は漱石が修善寺温泉にやってきてちょうど九〇年目ということになる。

 自然公園から修善寺梅林の中を歩く。気持ちのいい自然歩道だ。高浜虚子句碑や修善寺物語碑もあるので立ち寄る。この道は「花と文学の散歩道」と呼ばれているらしい。

 修善寺の温泉街に出る。現在の菊屋旅館の前を通る。修善寺に参拝する。早朝なので散歩している人が多い。修善寺のキャッチフレーズは「伊豆の小京都」だ。

 修善寺駅から伊豆箱根鉄道で三島駅まで行く。三島から新幹線に乗り、一時間で浜松に着く。


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